隅から見えた景色: kisswitch

2011年11月03日

隅から見えた景色




心外だった。
私なんて腐るほどいる一般人だったから。
特技とか優れて出来るものがなかった。
別にだからといって人が良いわけでも、人付き合いが良いわけでもなかった。
人間のはしっこみたいな自分に目を配る人なんてそうそういないだろう。
そんな人はちょっと観点が狂った人だ、言うならば、人間の隠れている裏の存在。
ずれてる人、そういう人が一番正論を言う。



何が心外かって、さっきの告白だ。
勿論、私の友達同士が付き合うことになった話。
人間のはしっこにいる人には、ああいうのがどうみても悲しい結末にしか見えてこない。
人間の裏の存在の人っていうのはそういうの分かりきってるんだろうけど、
ただ当たり障りない人間関係を築いている人には何にも見えてこないんだろう。
むしろ未来のキラキラなビジョンが見えてる。
お似合いだね、なんて思ってもないことを口にしてさ。


彼女は優しい女の子だ。
基本誰にでも優しくするし、故に友達も多い。
特技もバドミントンでそれなりの頭の良さ。
私の友達でいつも一緒にいるかと言われればいるのだが、一番の友達かというと怪しい。
なんてったって誰にだって優しいから。

一方、彼は人間の裏の存在だと思う。
何故裏の存在なのに告白することを選んだのだろうか。
私はそれが疑問で仕方ない、驚きである。
もしかして恋は盲目だとかそんなこと言い抜かしてしまうのだろうか、
折角の飛び抜けた変人センスが台無しになりそうだ。
よく突拍子もないことを言う。
例えばあの先生は最近彼女と別れたとか。
まあ大体当たっていて、なんで気付くのかを訊けば『見てれば分かる』なんて言ってみせる。
観察力の問題より観察して見透かすところにセンスがあると思う。

そんな彼が彼女となぜ付き合うことになったのだろうか。
彼なら見抜いているはずだ、彼女を。



それから数日経って隙を見つけてついに訊くことができた。
「で、なんで付き合うことにしたの」
彼は周りを見回して特に問題ないと判断したらしい。
「あの空っぽな優しさはどっから出てくるんだろうかなーと思って」
「あーいやーとっても理解できた、けど一番重要なことが」
「あ、それ以外は好きですよ、
 あんさんから聞いていた通り女の子っぽいのに男の気持ち分かってくれるし、ほどよく」
どうやら普通に好きらしい。
「でも振るより振られそうだよね、って俺本人がが言ってみちゃうわ」
自分で自分の予測もしたらしい。流石ずれてる人だ。
「というか、彼女にそんなこと訊いちゃうの、優しさ空っぽだねって」
「そこで振られちゃうかもね、頭かたいのよって」

彼のずれてるは、普通の人からみたら確かに固定された考えに見られそうだ。
普通の人じゃなくても、人間の裏の存在みたいな人は色んな考えを持っているが故に、
たどり着いた答えがかたい印象を受ける。
そういうずれてる人はなかなか好かれないし受け入れてもらえない。
ある意味騙されているのか分かっているのかはどうだか、彼女は特殊だと思った。



数日後、彼が続きの話をしてくれた。



優しさっていうのは、勝手に出てくる。
ああ、この人が困っているんだな、なら助けなきゃ。という。
そう見せかけて実はあとの何かのためなのだ。
例えば嫌われたくないとか、もっと好かれたいとか。

結局優しさなんて人のためにしてあげられない。
それを分かって振る舞わないと優しさは自分のためで、人に出来る優しさは到底たどり着けない。
誰かに好かれたかった、嫌われたくなかった。
評価をあげてほしかった、みんなみんな自分のため。
それで相手が笑顔になるのなら、相手が悲しんだ後に自分が笑顔になるのよりかましだ。
自分はいいことをしたんだからいいだろうという妥協。
いいことをした自分がいいように見える優越感。

人のために優しくすることなんて難しいことなんだ。
君は今までなんのために、誰のために人に優しくしてきたのか。



なんてことを力説したらしい。
彼女はまるで精神科医に診察してもらったようにわんわん泣いたらしい。
まあ、その後の2人は言わずもがな…と言いたいのだか、一度別れてからまた付き合ったらしい。
彼女の考え方も変わったと思う。
今の彼女には人間の汚いところが見えていると思う。
気遣いがなければ仲良くなれない人は本当の友達じゃないなんて言っていた。
彼女は変わった。友達も多い、特技もある。
だけど人間のはじっこの考え方。人間の悪いところが見える。
人間のはしっこから見えた景色は汚い。
それがいいことなのかと訊かれればいいことではないだろう。
でも、それでも彼女の気持ちは今すっきりしているだろう。
彼女の優しさは、今、人のために。

あなたのその優しさは、誰のためですか?
posted by 秋桜 at 08:22| Comment(0) | 短編小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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